初沢山の四季
蛇結茨
5月の終わりから、6月にかけて山に咲きます。
オヤマボクチ
11月、初沢山のあちこちにアザミに交じって、オヤマボクチの花がたくさん咲いています。
オヤマは、御山、ホクチは火口、この植物の細かい毛を集めて、火を熾す時、火を移すのに使ったところから、この名前がつきました。
春先に出る若葉を、ヨモギの代わりに使って草もちを作る地方もあるようですが、試作してみたところ、やはり、ヨモギ餅の方が香りで勝ちです!
夏に向かって茂る大きな葉っぱの繊維を取って、蕎麦を打つ時つなぎに使う地方もあるようです。
いろいろに利用されてきた野草ですが、びっくり!なのは、この花の美しさ・・・
アザミのような花なのですが、細かい花びらは紅、たくさんの雄蕊は黒、花粉は白、と、色の取り合わせが見事です。ただし、受粉するとすぐに花粉はなくなり、雄蕊が伸びて垂れ下がり、まるでくたびれた熊のようにまっ黒になってしまいます。この花の美しさを鑑賞できるのはほんの短い間、それも写真ではなかなかわかりません。実物を見られる機会があるといいですね。
蕗の薹
道の駅に蕗の薹を見かけました。立春前のこの寒い時期に、八王子のどこに蕗の薹が出ているのでしょう?
皆様のお庭にも蕗があるかもしれませんね。もう蕗の薹を見つけられましたか?可愛いころんとした丸い時、ひとつ見つかってもそのまま大事に残しておきます。そのうちそこここにいくつか出てきたら、一緒に採っててんぷらにしましょうか?昔から、春は苦いものを食べると身体にいいと言われています。
母は、茹でこぼして油でいため、砂糖と味噌で調味しますが、茹でこぼしてあく抜きしたのをざくざくと刻み、そばつゆで煮て、佃煮にするのも美味しいです。
春の味覚、お試しください。
ホウチャクソウ
春の林の中に、ひっそりと咲く、薄緑色の花、花の形がお寺の屋根から下がる宝鐸に似ている事から名付けられたと言われています。鳴子百合のような姿ですが、なるこゆりやアマドコロと違い、若芽には毒があるそうですから、誤食に注意と書かれていました。ホウチャクソウよりは少し明るい斜面等に咲く稚児百合と自然交配することもあるとか・・・稚児百合も初沢山にはたくさんありますが、こちらはずっと背は低く、花は花弁が開くものの、ころんと丸い可愛い形をしています。
梅仕事
6月に入ると、段々梅の実が大きくなってきます。
梅仕事とは、梅雨時に収穫した梅を、梅漬けや、梅酒、梅シロップと、いろいろに加工するお仕事を言います。
おうちに梅が生ったり、梅が手に入ったら、作ってみては如何でしょう?
大きな梅は時間がかかりますが、小梅だと本当に簡単に梅漬けができます。
洗って拭いてへたの所を竹串等で取った小梅を、10%前後の塩と一緒に厚手のポリ袋に入れ、ちょっとだけ焼酎か酢を加えて口を縛り、ちょっともみもみします。
小梅に焼酎と塩をまぶしたところで、破れて梅酢がこぼれたりしないように、もう一枚のポリ袋に入れてしっかり縛り、上から重しを乗せます。百科事典のような大きな本なら3~4冊?、電話帳なら5冊くらい?、ジュースの入った箱でも、何でもいいので、ぎゅーっと押します。案外◎と思った重しが、お米の袋でした。
梅がでこぼこでもその形に添って押してくれます。
すぐに梅酢がしみ出てきます。1日経ったら梅はしんなり、梅酢に浸かっていますので、瓶に入れ、一番上の梅も梅酢から出ないように重しをするか、塩漬けの赤紫蘇でぎゅーっと蓋をします。1日も置けば梅酢がしみ出し、梅は一寸しんなり、という感じになります。
どこやらの番組ではこれをガラス瓶に入れ、日の入る窓際に置いていました。
これを知人に差し上げたら好評でした。市販の梅は、いろいろ調味料が添加されたのが多いのですが、この昔ながらの塩だけで漬けた梅がいいのだそうです。何も余計なものが入っていないのは保証付きです。
不如帰ーホトトギス
紅葉台では、よくホトトギスが鳴いています。15年6月1日、木の枝に停まっているホトトギスを初めて見ました。
「ホ・ト・ト・ギ!・ス」と、「ギ」のところに強勢をつけたような鳴き方ですが、時によっては、「てっぺんかけたか!」とも聞こえます。
平安時代には、『忍び音』と言ってホトトギスの声を聞くのが初夏の風物詩でした。『夏は来ぬ』の歌詞にもありますね。
ところが、声はすれども姿は見えず。新緑のこの季節、ホトトギスを見るのはとても難しいです。家人は「飛んでいる所は見かける」といいますので、ホトトギスの声を聞かれたら、空を見上げてみてください。鳴きながら飛ぶのだそうです。
ホトトギスー杜鵑
ホトトギス、と言う名前の鳥がいて、同じ名前の植物があります。
秋に花を咲かせるホトトギスの花には、鳥のホトトギスのお腹にあるような斑点があることから、名付けられたそうです。
いろいろな種類が栽培されていますが、初沢山にあるのは、ヤマホトトギスです。6枚の花びらが杯状になった真ん中に雌しべが空を向いて突きだしています。『今年も咲いたね!』と、出会う度に嬉しい、可愛い花です。
条件が整えば、毎年咲きますから、見に行ってくださいね。
ノビルー野蒜
野に生える、ネギの仲間です。春になると、20cm~30cmの、細いネギのような線形の葉を2、3本出します。掘ると小さな鱗茎があり、食べられます。
畑の脇などの他、道路沿いの植え込みにまで生えていることがあります。お庭に生えると抜き捨ててしまう方もいらっしゃいますが、美味しいですよ~
掘り出して洗い、髭根を取ったものをくるくるリース状に巻いて、衣を着けて天麩羅にしたり、生のままみじん切りにしてお味噌に混ぜた野蒜味噌も美味しいです。
春の味覚、お試しください。
芹
野に出る芹は、売っているもののように大きくはありませんが、香り高いです。
毎年芹が出る田んぼに、連れて行ってもらってから、芹が見分けられるようになると、あちこちで芹を取れるようになりました。
ほんの一握りの芹でも、さっと茹でてきつめに塩をし、ご飯に混ぜたのを握れば、芹お握りの出来上がりです。
春の味覚、お試しください。
オナモミ
ラグビーボールの様な形で、とげとげがいっぱいついた黄緑色の実、子どもの頃は、このひっつき虫がそこここに生えていて、秋になると、この実を取って、服に模様をつけたり、友だちにくっつけたりして遊びました。
秋に草むらを歩くとくっついて、取るのが大変なひっつき虫と違って、遊べるひっつき虫、これがオナモミです。
八王子に来てから一度も見たことが無かったのですが、この春、ヨモギ摘みに行った先で、いっぱい実をつけた株が枯れて倒れているのを発見し、実を採取して来ました。とげとげを避けて実を割ると、中に丸い種が2つ3つ入っています。
調べてみると、オナモミは環境省のレッドリストに載っているのです。1929年にアメリカからオオオナモミが入って来た頃から数が減り、西日本では60年代になくなってしまったとか。
見比べてみることができないので、私が見つけたのが、オナモミか、それとも外来種のオオオナモミか、イガオナモミかわかりませんが、どれでもいいから、増やしたいな、と思っています。種、たくさんありますので、興味のある方に差し上げます。お声がけください。
蔓人参
久々に初沢山を歩いていたら、小さな木にからまっている蔓から可愛い釣り鐘型の花がいくつも下がっているのを見つけました!
調べてみたら、ツルニンジンでした。陽当たりが悪いのか、白地に入るはずの紫の筋は薄い色でしたが、春先に咲くハンショウヅルの花よりずっと大きい花や蕾をたくさんつけていました。
朝鮮半島では朝鮮人参同様、漢方薬として珍重されるそうです。そのうち実が生ったら、どこかに蒔いてみたいと思います。
コナラ
10年ほど前でしょうか、犬を連れて散歩に出、桃源台公園の向こうから右に山道に入り、登っていったところ、真っ赤に紅葉した葉っぱに気付きました。大きな木の足下に生えている20cm程の木に、5,6枚の葉っぱを付けているのですが、びっくり!!!したのは、それが「ドングリ」の木の葉だったことです。
何十回も秋を迎え、毎年紅葉を見て来ましたが、ドングリの葉っぱはぱっとしない褐色から茶色のものばかり、と思い込んでいたからです。ドングリの木の葉が紅葉のように真っ赤に紅葉しているのを見たのは生まれて初めてでした。何故、ドングリ、本当の名前はコナラの葉が赤く色付いているのか?今まで自分がぼーっとしていたため、実は真っ赤なドングリの葉を見ても気付かなかったのか?それとも、その年の気候に何か原因があるのか、理由はわかりませんでした。
ところが、この疑問が去年の秋、解消しました。都立小峰公園に行ったとき、11月号の「小峰だより」の表に、真っ赤なコナラというタイトルの下に、あの紅葉した葉っぱの写真があったのです。
コナラの成木は、黄褐色に紅葉してから落ちるのですが、幼木では成木とは異なる色を表す事があるのだそうです。その理由はまだわかっていないそうですが、太古の遺伝的記憶が幼い時だけ現れているという説があるそうです。太古のコナラは成木になってもこんな美しい真紅に紅葉したのでしょうか・・・
科学的根拠は乏しい俗説だそうですが、素敵ですよね。
この年も、久しく見なかった真っ赤なコナラの葉を見つけました。もう一本、紅葉台から初沢山へ登る道のすぐ右側にコナラの幼木があったのです。
去年もドングリがたくさん落ち、今年もコナラの赤ちゃんがたくさん育っていたら、又真っ赤な紅葉が見られるかもしれません。コナラの紅葉は11月中旬から下旬です。お散歩の時など、出会えるといいですね。
去年の小峰だよりは、文庫に持って行きます。